積み木を使って上肢機能にアプローチなんてできるの?
僕たち作業療法士が扱う道具はさまざまですが、今回は「積み木」を使ったアプローチ方法を紹介します。
積み木といえば子どもが遊ぶものというイメージが強いかもしれません。
しかし、リハビリの現場では上肢や手指の機能訓練に非常に有効なツールです。
「積み木なんて簡単すぎるんじゃない?」と思うかもしれませんが、実際には細やかな動きを引き出すための可能性が詰まっています。
さらに、少しづつ積んでいく上で積み木がグラグラした時、対象者の方とハラハラという気持ちを共有できます。
その時、対象者の姿勢コントロールは変わり、介入前とは違った上肢の動きになるかもしれません。
ぜひ参考にしてみてください!
OTまこまる(@OT_MAKO)
●転職回数:2回
●病院や老健、デイサービスに従事した経験あり
●学会発表、勉強会への参加したことをもとに発信
なぜ積み木を使うのか?
積み木を使う理由は以下の3つです。
- 微細運動の促進
- 積み木をつまむ、持つ、置くといった動作は、手指や手首、前腕の微細運動を効果的に促します。
- 段階的な難易度調整が可能
- 大きさや形状、積む高さを変えることで、患者さんの状態に合わせた調整が簡単にできます。
- 楽しみながら訓練できる
- 患者さんにとっても「遊び」と感じられるため、リハビリへの抵抗感が軽減されます。
どういった方にアプローチする?
積み木を使ったアプローチは、以下のような方に向いています。
- 上肢や手指の動きが不器用な方
- 微細運動を改善し、日常生活動作(ADL)の向上を目指します。
- 脳梗塞発症後、BrsⅣ〜Ⅴの方
- 上肢の筋力や持久力が低い方
- 積み木を繰り返し操作することで、持続的な筋力の発揮を練習できます。
- 認知機能の低下が見られる方
- 「色別に分ける」「模様を揃える」「特定の順序で積む」などの課題を取り入れることで、認知機能や集中力の向上も期待できます。
積み木を使った具体的なアプローチ方法
1. 基本編:つまむ・持つ・置く
- 準備
・正方形のシンプルな積み木を使用。 - ポジション
・端座位で行います。
・手指が自由に動かせるよう、必要に応じて肘や肩を適切なポジションに調整します。 - 動作
- 目の前に積み木を並べ、「つまんで別の場所に移動させる」動作を繰り返します。
- 麻痺側の手を使って一個づつ、上へ積み木を積んでもらうようにします。
- ある程度の高さまで積むことができれば、積み木を崩さないようにおろしていくように促しましょう。(この時、少し余裕がある人には『絶対落とさないでくださいね』といった声かけをしてプレッシャーをかけても良いかもしれません。)
⒉応用編:立位で行う
立位で行う場合も、座位で行うとき同様に積み木を上に積んでいくだけです。
しかし、座位で行うのとは異なり、上肢の筋緊張は高くなりがちです。
さらに、積み木課題は積めば積むほど、緊張するものです。
対象者の方が、脳梗塞発症後に作業活動に没頭して行う中で意地やプライドが垣間見えるところです。
座位で行う場合と異なり、立位バランスへのアプローチにもなります。
また立位で上肢が自由に使えるようになると、歩行時の上肢の振りも介入前とは異なり、改善してきます。
そうすると、歩容の改善も考えられるので、前後評価しておくと良いかもしれません。
⒊注意点
座位で行う場合も、立位で行う場合も誘導なしで行うことも可能ですが、対象者の中には誘導を要する方もいます。
誘導を行う時にセラピストが把持する箇所は以下の通りです。
- 手関節
- 肘関節
- 手関節+肘関節
手関節+肘関節の誘導が必要な方は以下のような方が挙げられます。
- 手指で積み木を把持することが難しいのでテノデーシスを使って積み木の把持を誘導しなければいけない方(主にBrsⅡ〜Ⅲ)
- 上肢・手指共に動きが不安定な方
手関節や肘関節どちらか一方を把持して誘導が必要な方は以下の通り。
- 上肢や手指の動きが不安定な方
- 対象物までのリーチは可能であるが、最後の把持することが難しい方
積み木という課題は失敗しやすい課題になっています。
『失敗しても平気!!』という方なら何も問題はありません。
しかし、『病前はこんなこと余裕でできていたのに…今は、こんなこともできない。』と考えられる方もいます。
積み木課題をする上で対象者の選定は必須ですが、失敗しないことも大事です。
失敗しないように、僕たちセラピストは上手に誘導し対象者の方が『上手くできた!』と思えることが大事になるのです。
次の治療展開
積み木で手指や上肢の微細運動や筋力の向上を図った後は、次のステップへ進みます。
- 日常生活の動作に応用
- 「コップをつかむ」「ペンを持つ」などの動作を取り入れ、実用的な動作に近づけます。
- 別の道具を使った訓練
- 洗濯バサミや粘土など、さらに応用的な道具を使うことで、より細かな動きを引き出します。
まとめ
積み木は、見た目はシンプルでもリハビリの可能性が大きい道具のひとつです。
微細運動や筋力強化だけでなく、患者さんに「遊び」の要素を取り入れることで、リハビリが楽しく継続しやすくなります。
重要なのは、患者さんの状態をしっかり評価し、無理のない範囲で行うこと。
そして、徒手介入と組み合わせながら積み木を活用することです。
ぜひ、明日からの臨床に取り入れてみてください!
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