「リハビリ18単位のノルマがきつくて、毎日ヘトヘト…」「患者さんの対応に追われて、カルテ記載の時間が確保できない」そんな悩みを抱えていませんか?
結論から言うと、18単位は確かにハードですが、業務の効率化と職場環境の見直しで改善可能です。
本記事では、理学療法士(PT)・作業療法士(OT)・言語聴覚士(ST)が18単位をこなすための具体的な工夫と、働きやすい環境を手に入れる方法を解説します。
これを読めば、明日からの臨床現場が少し楽になり、長く続けられるキャリアプランが見えてくるはずです。
リハビリ18単位の実態と診療報酬の仕組み
18単位が標準になっている理由
リハビリテーションの現場では、1単位=20分として計算され、18単位は360分(6時間)の直接的な患者対応を意味します。なぜこの数字が一般的になったのでしょうか?
病院や施設の収益は診療報酬に直結しており、リハビリ部門は「稼ぎ頭」として期待されています。
特に回復期リハビリテーション病棟では、365日体制で高密度なリハビリを提供することが求められ、セラピスト一人あたりの単位数も必然的に増加しました。
- 急性期病院:12~15単位
- 回復期病院:15~18単位
- 維持期・生活期:12~18単位
- 訪問リハビリ:15~20単位(移動時間含む)
管理職から見た18単位の意味
リハビリ部門の管理職は、病院経営と現場スタッフの負担のバランスを常に考えています。
18単位という数字は、経営的には「最低限必要なライン」である一方、現場では「限界に近い数字」として認識されているのが実情です。
新人セラピストにとっては特に負担が大きく、評価・実施・記録のサイクルを効率的に回すまでに相当な時間がかかります。
なぜ18単位がきついのか?現場の声から分析
身体的な負担:腰痛・肩こりとの戦い
理学療法士や作業療法士の職業病とも言える腰痛。1
8単位をこなすということは、1日に何十回も患者さんの移乗介助や起き上がり動作の補助を行うことを意味します。
- 脳血管疾患の患者さんの全介助移乗
- 高齢者の立ち上がり練習での支持
- ベッドサイドでの長時間の前傾姿勢
- 車椅子への移乗動作の繰り返し
これらの動作が1日18回以上繰り返されれば、どんなに丁寧な関わりをを心がけても、身体への負担は避けられません。
時間的な制約:カルテ記載と書類作成
リハビリ実施後のカルテ記載は診療報酬請求の根拠となる重要な業務です。
しかし、18単位をこなしながら、以下の書類を作成する時間を確保するのは至難の業です。
- リハビリテーション実施計画書
- 退院時サマリー
- カンファレンス資料
- 家族への説明資料
- 他職種への申し送り事項
多くのセラピストが残業時間を使って記録業務を行っているのが現状で、これが慢性的な疲労につながっています。
当ブログでは、患者さんの自主トレ資料作成に役立つサイトをまとめた記事も過去に書いていますので参考にしてください。

精神的なプレッシャー:患者対応の難しさ
18人の患者さんそれぞれに最適なリハビリを提供するには、高度な臨床スキルと精神的な余裕が必要です。
しかし、タイトなスケジュールの中では…
- 認知症患者さんへの対応に十分な時間が取れない
- リハビリ拒否への対処が雑になりがち
- 患者さんの小さな変化を見逃しやすい
- 家族への説明が不十分になる
これらの問題は、セラピストとしての専門性を発揮できないジレンマを生み、モチベーションの低下につながります。
18単位を効率的にこなす実践的な工夫
スケジュール管理の最適化
効率的な動線設計と時間管理が、18単位をこなす鍵となります。
以下の工夫を実践してみましょう!
病棟ごとにまとめる
- 2階病棟:9:00~10:40(5単位)
- 3階病棟:11:00~12:00(3単位)
- 昼休憩:12:00~13:00
- 4階病棟:13:00~15:00(6単位)
- 2階病棟:15:20~16:40(4単位)
キャンセルを想定した予備枠
体調不良や急な検査でキャンセルが発生することを前提に、予備時間を設けておくと、スケジュールの立て直しがスムーズです。
記録業務の時短テクニック
カルテ記載を効率化する具体的な方法
- テンプレートの活用:疾患別・目標別のテンプレートを準備
- 音声入力の導入:スマートフォンでメモを音声入力し、後で清書
- 略語・定型文の統一:部門内で共通の略語集を作成
- タブレット端末の活用:患者間の部屋を移動中に音声にて入力
チーム連携による負担軽減
一人で抱え込まず、チーム全体で効率化を図ることが重要です
情報共有の仕組み作り
- 朝のミーティングで困難事例を共有
- 対応方法のマニュアル化
- 成功事例の横展開
業務分担の見直し
- 書類作成の分業化
- 新人教育の計画的な実施
- フォロー体制の確立
転職・職場環境改善という選択肢
こんな職場は要注意
以下の特徴がある職場は、構造的な問題を抱えている可能性があります。
- 常時18単位以上が当たり前
- 有給休暇の取得率が極端に低い
- 離職率が高く、常に求人を出している
- 残業代が適切に支払われない
- 上司が現場の声を聞かない
働きやすい職場の特徴
一方、以下のような職場は長く働ける環境と言えるでしょう。
- 適正な単位設定:15~16単位が標準
- 教育体制の充実:段階的な単位数増加
- 多様な働き方:時短勤務やパート勤務の選択肢
- キャリアパスの明確化:臨床以外の道も用意
- 職員の意見を反映:定期的な面談とフィードバック
転職活動のポイント
もし転職を検討する場合は、以下の点を確認しましょう!
- 実際の平均単位数(求人票の数字だけでなく)
- 有給消化率と残業時間
- リハビリ部門の人員配置
- 教育研修の充実度
- 職場見学での雰囲気
訪問リハビリやデイサービスなど、病院以外の選択肢も視野に入れると、自分に合った働き方が見つかるかもしれません。
よくある質問(FAQ)
Q1: リハビリ18単位は法律で決まっているのですか?
A: いいえ、18単位は法的な義務ではありません。診療報酬上の上限は疾患別リハビリテーションで1日9単位(180分)までと定められており、18単位は各施設が経営判断で設定している目標値です。労働基準法に照らし合わせると、適切な休憩時間の確保が必要であり、過度な単位設定は問題となる可能性があります。
Q2: 妊娠中でも18単位をこなさなければいけませんか?
A: 妊娠中の職員に対して18単位を強制することは、母性保護の観点から不適切です。労働基準法では妊産婦の軽易業務転換が認められており、医師の診断書があれば単位数の軽減や業務内容の変更を請求できます。多くの施設では12単位程度への軽減や、デスクワーク中心の業務への配置転換を行っています。
Q3: 18単位ができないと理学療法士失格でしょうか?
A: 全くそんなことはありません。質の高いリハビリテーションの提供には、単位数よりも患者さん一人ひとりへの丁寧な対応が重要です。訪問リハビリでは1日5~7件、外来クリニックでは12~15単位が一般的で、18単位は一つの働き方に過ぎません。自分に合った職場環境を選ぶことが、長期的なキャリア形成には大切です。
Q4: 新卒1年目でも18単位は普通ですか?
A: 新卒1年目から18単位を課すのは、教育的観点から推奨されません。日本理学療法士協会のガイドラインでも、段階的な症例数の増加が推奨されています。一般的には、1年目は12~15単位程度から始め、2年目以降に徐々に増やしていくのが適切とされています。
Q5: 18単位で燃え尽き症候群になったらどうすればいい?
A: まず産業医や上司に相談し、単位数の調整を依頼しましょう。それが難しい場合は、メンタルヘルス外来の受診も検討してください。診断書があれば休職も可能です。また、部署異動や転職も選択肢の一つです。燃え尽きる前に早めの対処が重要で、自分を責める必要はありません。
Q6: パートでも18単位を求められるのは普通ですか?
A: パート職員に正社員と同じ18単位を求めるのは一般的ではありません。時短勤務の場合、勤務時間に応じて12~15単位程度が適切です。もし不当な要求をされている場合は、労働契約書を確認し、必要に応じて労働基準監督署に相談することも可能です。
Q7: 18単位達成できないと給料は下がりますか?
A: 基本給は労働契約で保証されているため、単位数未達成を理由に減額することは違法です。ただし、単位数に応じたインセンティブ(歩合給)がある場合は、その部分のみ変動する可能性があります。給与体系は施設により異なるため、就業規則を確認することが重要です。
Q8: 訪問リハビリの18単位と病院の18単位、どちらが楽ですか?
A: 一概にどちらが楽とは言えません。病院の18単位は移動距離が短い反面、身体介助の負担が大きくなります。訪問リハビリは移動時間がある分、実際の患者対応時間は短くなりますが、天候や交通状況に左右されます。また、訪問では1対1でじっくり関われるメリットがある一方、緊急時の対応は一人で行う必要があります。
まとめ
リハビリ18単位は確かにきつい現実ですが、工夫次第で乗り越えることは可能です。
まずは自分でできる効率化から始め、それでも改善されない場合は職場環境の見直しも検討しましょう。
理学療法士・作業療法士・言語聴覚士として、長く充実したキャリアを築くためには、無理のない働き方を選ぶことが大切です。
患者さんに質の高いリハビリを提供するためにも、まずは自分自身の健康と働きやすさを大切にしてください。
明日からできる小さな工夫から始めて、より良い臨床現場を作っていきましょう。

